アラブ諸国の民主化運動が原油高高騰をもたらす

原油価格高騰の背景

足元でインフレ懸念が台頭している背景に、アラブ諸国を中心に相次いでいる政変の影響を忘れてはならない。政治的な要因と世界的なインフレ懸念の台頭の関係は、2つの観点から整理すると分かりやすい。1つは、食料品価格の上昇が政治情勢の不安定化の要因になったこと。もう1つは、その結果起きた政情不安が、今後のインフレ懸念をさらに増幅させるということだ。

 

アラブ諸国の政治的不安定化のきっかけになった昨年12月中旬からのチュニジアの政変は、高い失業率と食料品価格上昇による国民の不満爆発が発端だった。若年層の割合が高いアラブ諸国では、工業化への発展が遅れていることもあり、他の諸国と比較して失業率が高い。仕事に就くことができず、生活苦の人々の不満が政権に向かうことは容易に想像できる。そこに、穀物などの価格上昇による食料品の価格局騰が追い打ちをかけ、民主化運動の結果、ベンアリ大統領が国外脱出。それをきっかけに、一気に反政府デモがアラブ諸国に広がった。

 

すでに、「アラブ諸国の盟主」を自任してきたエジプトでは、約30年にわた大統領の座にあったムバラク氏が辞任に追い込まれた。さらにイエメンでは、長期政権を維持してきたサレハ大統領が2年後の大統領選挙への不出馬を明言。リビアでも、41年間独裁体制を続けるカダフィ大佐の退陣を求める反政府デモと軍による激しい武力弾圧が続いている。そのほか、ヨルダン、イラン、バーレーンなどの各地に飛び火し、混乱が収まる気配は見えない。

 

今後、世界有数の産油国であるサウジアラビアの王政が怪しくなる事態になると、原油価格の動向に大きな影響を与えることは避けられない。すでに1バレル=100ドルで高止まりしている原油価格が、さらに急上昇するだろう。スエズ運河の航行に支障が出ることも懸念材料だ。スエズ運河はアジアと欧州を結ぶ世界経済の大動脈であり、単に原油価格の上昇によるインフレ懸念の高まりの問題にとどまらなくなるだろう。

8-9日に欧州連合(EU)首脳会議を控え、結果を見極めたいとのムードが強まりそうだ。財政規律に関する条約改正や基金拡充の合意への期待感もあるが、一方で昨日の為替相場(FX)や株式の欧州市場ではドイツがユーロ圏救済基金の融資能力拡充案に反対したと伝わったこが嫌気された。日中に関連するニュースフローも出やすいと考えられ、報道に振らされやすい状況である。